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2011年7月7日木曜日

耕作放棄地の問題

実家に帰ると誰も居なかった。裏の急斜面の坂道を登ると我が家の畑である。家人は夕日を浴びて農作業中であった。挨拶もそこそこに草取りや獣避け網の取り付け作業を手伝う。

上の畑にチャゴ実がなっているというので行ってみた。チャゴ実の正式名称は知らない。あの頃、近所に大きなチャゴ実の木があり、我々子供たちは木に登り、採っては口にいれて中の種をプィと外に吹出し実だけ食べたものである。他にも野山の実をよく食べた。桑の実、薔薇苺、グミ、スグリ、ザクロ、アケビ、栗等々。栗は別格としても、拙者はこのチャゴ実が大好物であった。その後、近所のおばあちゃんが、子どもが登って危険と思ったのであろうか、この木を切ってしまったようだ。そして、何十年もこの実を食べる機会はなかった。母がチャゴ実の幼木を植えていたのは知っていたが、実の成っているのを見るのは初めてである。幹は太くはないけれど、沢山実を付けていた。
チャゴ実の木

新種が違うのであろうか、やや小粒のような気がする。赤く熟している実を口に頬張る。素朴な味がする。それほど甘くはないものの不味くもない。しかし、夢中になって食べたことが、今では信じられない。

山の斜面に切り開かれた畑は、我が家の畑を除きご覧のとおり今では耕作放棄地になっている。昭和30年代は、今ごろは一面刈り取り前の黄色に実った麦畑であった。海と山のこの小さな半島は平地が少なく、水田に適した地域は限られていた。貴重な米を節約するために、採れた麦を混ぜて食べていた。だから、どの家でも麦を栽培していたのである。
我が家の畑と周辺の耕作放棄地

裏の山にも人間が入らなくなってしまった。当時は薪が主要なエネルギー源なので、山道があったのだが、今では廃道になってしまった。そして、カモシカ、アライグマ、ニホンシカ等の獣が山里近くに出没するようになり、農産物の被害が多い。畑の周囲を獣避けの網で囲まなければならなくなってしまった。


これは我が家だけの問題ではない。日本中の山間地に起きている共通の問題である。過疎化そして限界集落。これは思うに、都市への一極集中化がもたらした一つの弊害であろう。危険な原発を他県に依存し、エネルギーを自給し得ぬまま膨張をし続ける都市、一方で裏山に山林資源を豊富に抱えた山村が限界集落に陥る。社会がどこか狂っている。大いなる矛盾である。周辺の耕作放棄地が、そんなことを教えてくれる。





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